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弁護士コラム Column

将来の退職金は財産分与対象になる?【弁護士解説】

2022年11月02日
岡崎事務所  弁護士 安井 孝侑記

離婚のご相談で多くの方が悩まれる「財産分与」。財産分与は一般的に婚姻期間(結婚してからの期間)が長ければ長いほど、金額が増える傾向にあります。しかし婚姻期間が長くなると、離婚時の退職金など、どこまでを財産分与に含めるかも判断が難しくなってしまいます。

​​ そこで今回は、「財産分与と退職金について」弁護士法人愛知総合法律事務所 岡崎事務所所長が解説します。

財産分与と退職金について解説

離婚事件があると,多くの場合,財産分与が問題となります。その際に,夫婦の退職金について問題になることがあります。

​​ 相談者や依頼者の方からすると

・なんでまだもらってないものをわけないといけないのか。
​ ・このご時世,本当に将来もらえるかわからないじゃないか。
​ ・払えるとしても,本当に退職したときじゃないのか。

という疑問をもたれることが非常に多い印象です。

退職金は財産分与の対象となる?

まず,退職金が財産分与の対象になるかどうかが,問題になります。これについては,退職金が給与の後払い的性質を有していることから基本的に財産分与の対象となり得るものと考えられます

将来確実にもらえるわけではない,定年までにまだ何十年もある,という理由から財産分与の対象にすべきでない,という意見はよく見受けられますが,離婚の調停・訴訟の中で一切考慮しない,という考えはあまり採用されていない印象です。

以上のとおり退職金については,財産分与の対象となることが多い,という結論です。

ただ,すべてが対象となる,というわけではないので,気になる人は一度弁護士に相談されたほうがいいかもしれません。

財産分与に含まれる退職金の計算方法

退職金が,財産分与の対象となり得るということで,対象となる場合の退職金の金額を計算するか,について少し考えてみたいと思います。

​​ 例えば,離婚協議時点でまだ在籍していて,15年後に定年,となった場合に現在の退職金を財産分与の中でどのように評価すべきでしょうか。

典型的な事案だと,基準時(別居時とすることが多い)に自己都合退職をしたと想定した場合に支給される退職金の額から,婚姻時に退職した場合に支給される退職金の額を差し引いた金額を計算することが多いです。

基準時の退職金-婚姻時の退職金この退職金額

ですが,調停や訴訟のときには,会社に問い合わせると,シミュレートをして算出した書類を発行してくれることが多いです。

この場合には基本的に問題ありませんが,就業規則から計算する場合があります。このときには退職金額の計算式が正しいか確認する必要があります。

​​これ以外の計算の仕方としては,基準時の退職金額を,会社での在籍期間と結婚の期間との割合で計算する場合があります。

​​ これ以外に,中間利息を控除する場合もあります。これは,確定拠出年金のような定年まで途中支払いが予定されていないような種類の退職金の場合によく見受けられます。

以上のとおり,退職金ひとつをとっても,その計算式が争いになることはよくあります。

このように,退職金と財産分与の問題は,一般の方の感覚と少し異なる部分も多いので,離婚に関して退職金の分与が議論になっている方は,一度だけでも弁護士に相談してみたほうがいいかもしれません。

財産分与での退職金の評価と支払い時期

離婚事件で,財産分与の協議をする中でよく問題になるもののひとつが,退職金の評価方法です。退職金が財産分与の対象となるか退職金の評価方法については,これまでの記事で掲載してまいりました。

仮に金額まで決まったとして,その支払時期がいつになるかという点も問題となります。

これについては,財産分与自体が,離婚に伴うものであり,原則としては離婚時に支払うべきものであると考えられます。ただ,これもあくまで原則ですので,実際に退職金を受け取った時点で分与を受ける,という結論になった審判例も存在しています。

私としては,やはりよほどの事情がない限り,離婚時に精算することが適切ではないかと思います。数年後であればいいですが,かなり長期の期間が空くとすると,やはり連絡自体が疎遠になりますし,受け取る側としてはその回収に不安があります。

また,支払う側としても,将来的にどのような事情が生じかはわからないので,先に精算を済ませておく方が紛争解決に資すると思われます。財産分与と離婚の問題はいろいろと難しい点がありますので,悩まれている方は一度弁護士に相談されることをおすすめします。

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